

割り込みは現在実行中のプログラムを一時中断し、より緊急性の高いプログラムを実行して元のプログラムに戻るための機構です。
システムやハードウェアの状態によってすぐに特定の処理を行なわなければならない場合、割り込みを使用しなければ一定期間ごとに状態を調べ、条件合致で処理を行なうというポーリング方式を採ることしか出来ませんが、割り込みを使用すると、条件を満たせば予め設定されたプログラムを即座に実行するという処理を行なうことが出来ます。この機構を使用すれば、ポーリング方式よりも高い即時性が期待できますし、何よりメインプログラムは自分の処理に専念することができます。
このドキュメントでは割り込みを取り扱うための関数について説明します。

割り込みが発生する要因は様々で、ARM9 と ARM7 で異なります。ARM9 では以下の要因で割り込みが発生します。
| 値 | 割り込みの種類 | ビット(2^n) |
|---|---|---|
| OS_IE_V_BLANK | Vブランク割り込み | 0 |
| OS_IE_H_BLANK | Hブランク割り込み | 1 |
| OS_IE_V_COUNT | Vカウンター割り込み | 2 |
| OS_IE_TIMER0 | タイマー0割り込み | 3 |
| OS_IE_TIMER1 | タイマー1割り込み | 4 |
| OS_IE_TIMER2 | タイマー2割り込み | 5 |
| OS_IE_TIMER3 | タイマー3割り込み | 6 |
| OS_IE_DMA0 | DMA0割り込み | 8 |
| OS_IE_DMA1 | DMA1割り込み | 9 |
| OS_IE_DMA2 | DMA2割り込み | 10 |
| OS_IE_DMA3 | DMA3割り込み | 11 |
| OS_IE_KEY *1 | キー割り込み | 12 |
| OS_IE_CARTRIDGE | カートリッジIREQ/DREQ割り込み | 13 |
| OS_IE_SUBP | ARM7割り込み | 16 |
| OS_IE_SPFIFO_SEND | ARM9・ARM7間送信FIFOエンプティ割り込み | 17 |
| OS_IE_SPFIFO_RECV *2 | ARM9・ARM7間受信FIFOノットエンプティ割り込み | 18 |
| OS_IE_CARD_DATA | カードデータ転送終了割り込み | 19 |
| OS_IE_CARD_IREQ | カードIREQ割り込み | 20 |
| OS_IE_GXFIFO | ジオメトリコマンドFIFO割り込み | 21 |
*1 キー割り込みはハードウェアの仕様上、使用しないで下さい。ただし、スリープからの復帰に使用することは可能です。
*2 PXIライブラリでは このOS_IE_SPFIFO_RECV を ARM7からの割り込みとして使用しています。このページの下の「PXI
ライブラリの割り込み」を参照してください。

TWLモードでもNITROモード同様に、ARM9 と ARM7 で用意されている要因は異なります。ARM9 では以下の要因で割り込みが発生します。
表中、★のついたものはNITROと比較して新たに追加されたものです。
| 値 | 割り込みの種類 | ビット(2^n) |
|---|---|---|
| OS_IE_V_BLANK | Vブランク割り込み | 0 |
| OS_IE_H_BLANK | Hブランク割り込み | 1 |
| OS_IE_V_COUNT | Vカウンター割り込み | 2 |
| OS_IE_TIMER0 | タイマー0割り込み | 3 |
| OS_IE_TIMER1 | タイマー1割り込み | 4 |
| OS_IE_TIMER2 | タイマー2割り込み | 5 |
| OS_IE_TIMER3 | タイマー3割り込み | 6 |
| OS_IE_DMA0 | DMA0割り込み | 8 |
| OS_IE_DMA1 | DMA1割り込み | 9 |
| OS_IE_DMA2 | DMA2割り込み | 10 |
| OS_IE_DMA3 | DMA3割り込み | 11 |
| OS_IE_KEY *1 | キー割り込み | 12 |
| OS_IE_CARTRIDGE | カートリッジIREQ/DREQ割り込み | 13 |
| OS_IE_CARD_A_DET ★*2 | メモリカードA MC_DET端子立ち下がり割り込み | 14 |
| OS_IE_CARD_B_DET ★*2 | メモリカードB MC_DET端子立ち下がり割り込み | 15 |
| OS_IE_SUBP | ARM7割り込み | 16 |
| OS_IE_SPFIFO_SEND | ARM9・ARM7間送信FIFOエンプティ割り込み | 17 |
| OS_IE_SPFIFO_RECV *3 | ARM9・ARM7間受信FIFOノットエンプティ割り込み | 18 |
| OS_IE_CARD_A_DATA (OS_IE_CARD_DATA) *2 | カード[A] データ転送終了割り込み | 19 |
| OS_IE_CARD_A_IREQ (OS_IE_CARD_IREQ) *2 | カード[A] IREQ割り込み | 20 |
| OS_IE_GXFIFO | ジオメトリコマンドFIFO割り込み | 21 |
| OS_IE_DEBUG_RECV ★ | DEBUG通信チャネル受信バッファリード可能割り込み | 22 |
| OS_IE_DEBUG_SEND ★ | DEBUG通信チャネル送信バッファライト可能割り込み | 23 |
| OS_IE_DSP ★ | DSP割り込み | 24 |
| OS_IE_CAMERA ★ | カメラ割り込み | 25 |
| OS_IE_CARD_B_DATA ★*2 | カード[B] データ転送終了割り込み | 26 |
| OS_IE_CARD_B_IREQ ★*2 | カード[B] IREQ割り込み | 27 |
| OS_IE_NDMA0 ★ | 新規DMA0 割り込み | 28 |
| OS_IE_NDMA1 ★ | 新規DMA1 割り込み | 29 |
| OS_IE_NDMA2 ★ | 新規DMA2 割り込み | 30 |
| OS_IE_NDMA3 ★ | 新規DMA3 割り込み | 31 |
*1 キー割り込みはハードウェアの仕様上、使用しないで下さい。ただし、スリープからの復帰に使用することは可能です。
*2 カードの A や B の名称は開発上の便宜的なものです。 B はデバッガ等開発機材で使用されるもので通常ユーザが使用することはありません。なので、例えばカードデータ転送終了割り込みを使用するときも、OS_IE_CARD_A_DATA
ではなく、OS_IE_CARD_DATA を用いる方がよいでしょう。
*3 PXIライブラリでは このOS_IE_SPFIFO_RECV を ARM7からの割り込みとして使用しています。このページの下の「PXI
ライブラリの割り込み」を参照してください。
全ての割り込みのイネーブル・ディセーブルを切り替えるマスターイネーブルフラグは
I/O レジスタ reg_IME (0x04000208) にあります。このビットが1 ならばイネーブルで、0
ならばディセーブルです。このフラグを操作する関数は OS_EnableIrq(), OS_DisableIrq(), OS_RestoreIrq() です。
割り込み発生の許可は、割り込み要因ごとに指定でき、I/O レジスタの reg_IE (0x04000210)
で行ないます。ビットが1 のものがイネーブルとなっている割り込み要因です。このビットを設定・取得する関数は
OS_SetIrqMask(), OS_GetIrqMask(), OS_EnableIrqMask(), OS_DisableIrqMask()です。( Set関数と Enable関数の違いに注意して下さい )
割り込みリクエストレジスタ reg_IF (0x03000214) の各ビットは、対応する割り込みが発生したときに
1 になります。割り込みと各ビットの関係は reg_IE と同じです。このフラグを設定・取得する関数は
OS_ResetRequestIrqMask(), OS_GetRequestIrqMask() です。
OS_EnableInterrupts(), OS_DisableInterrupts(), OS_RestoreInterrupts()です。
割り込みが発生したときに、割り込みハンドラでその割り込みが発生したことをチェックしておくためにチェックフラグ領域が設けてあります。この領域は
DTCM 上にあります。割り込み要因と各ビットの関係は reg_IE と同じです。チェックフラグを設定・取得する関数は、OS_SetIrqCheckFlag(), OS_ClearIrqCheckFlag(), OS_GetIrqCheckFlag()です。
割り込みはプロセッサ例外の一種です。システムは DTCM 上にある割り込みベクタ
HW_INTR_VECTOR_BUF に格納されているアドレスにジャンプします。通常は OS
の IRQ ハンドラのアドレスが格納されていますが、ユーザが独自割り込みルーチンを使いたい場合はここを書き換えることになります。
デバイス等からの割り込みの通知は、下の図のような流れでプロセッサに到達します。
指定のデバイスに対し、割り込みを発生させるように設定してあれば、そのデバイスの割り込み条件を満たしたときに、対応する IF のビットが 1 になります。
1 になった IF のビットの割り込み要因が IE で許可されていなければ割り込みは発生しません。また、IME がディセーブルであれば割り込みは CPU に通知されません。ここまでの条件を満たせば割り込み通知がARM9プロセッサに到達しますが、CPSR の IRQフラグが0 (イネーブル)である場合にIRQ割り込みが発生します。1(ディセーブル)であった場合は IRQ割り込みは遅延されます。
IRQ割り込みは、ARMプロセッサの例外の一種 ( IRQ 例外 ) です。詳細は 例外(概要) を参照してください。
IRQ 例外が発生したとき、ARM9 プロセッサはプログラムを中断して 0xFFFF0018 にジャンプします。下の図を参照してください。
0xFFFF0018 アドレスにジャンプした後、DTCM の一領域である HW_INTR_VECTOR_BUF に格納されているアドレスに制御が移ります。これは通常 OS の IRQハンドラのアドレスとなっています。ユーザが IRQ ハンドラを独自に作成する際は、HW_INTR_VECTOR_BUF を書き換えてください。IRQ ハンドラの中からは、事前に登録しておいたユーザの割り込みハンドラが呼び出されます。IRQハンドラから戻った後は、割り込みが発生したアドレスの次からプログラムを再開します。( ただし、スレッドが切り替わることもあります。スレッド(概要) を参照 )
OS の IRQ ハンドラ内の処理をさらに詳しく説明します。
ハンドラの最初では IME がイネーブルかどうかを調べ、イネーブルでなければ何もせずに戻ります。次に IE と IF の論理積をとり、これが 0 であれば何もせずに戻ります。0でなければ、1 となっているビットが今回処理する割り込みということになります。ここで IME と IE と IF を調べるのは、I/O レジスタにアクセスして割り込み禁止処理や割り込み要因の変更処理をしている間にも、その変更より先に割り込み信号がプロセッサに入ることがあるからです。ここでチェックを行なうことにより、正確に I/O レジスタの設定に準じることが保証できます。
その後の流れを説明します。先ほど計算した IE と IF の論理積の結果、1 となっているビットに対応する割り込みハンドラを呼び出します。このハンドラは、予めユーザが IRQ テーブルに登録しておきます。IRQ ハンドラからはこのテーブルを参照してユーザの割り込みハンドラのアドレスを取得します。
ユーザの割り込みハンドラから戻った後、ユーザプログラムに復帰します。ただし割り込みハンドラ内でスレッドの切り替えが発生するような事象が生じていれば、スレッドのリスケジューリングが行なわれます。( スレッド(概要) 参照 )
なお、ユーザの割り込みハンドラの中では、割り込みに対応するチェックフラグをセットしてください。このフラグは他のOS関数で使用されますが、その関数を使わない場合はチェックフラグをセットする必要は本来ありません。しかし個別に処理を変えることで実際に必要な個所で記述し忘れることもあるかもしれませんので、問題がなければ常に割り込みに対してはセットすることをお奨めします。(
OS_SetIrqCheckFlag() 参照 )
以下の関数は全ての割り込みのマスターイネーブルフラグを操作します。
OS_EnableIrq(), OS_DisableIrq(), OS_RestoreIrq()
詳細は システム(概要)を参照して下さい。以下は、「割り込み」カテゴリではなく「システム」カテゴリの関数です。
これらの関数で CPSR のステータスを変更することが出来ます。
OS_EnableInterrupts(), OS_DisableInterrupts(), OS_RestoreInterrupts()
以下の関数で割り込み要因を設定・取得することが出来ます。
OS_SetIrqMask(), OS_GetIrqMask(), OS_EnableIrqMask(), OS_DisableIrqMask()
以下の関数で割り込みリクエストフラグを操作することが出来ます。
OS_ResetRequestIrqMask(), OS_GetRequestIrqMask()
以下の関数で割り込みハンドラを設定・取得することが出来ます。
OS_InitIrqTable(), OS_SetIrqFunction(), OS_GetIrqFunction()
以下の関数で割り込みチェックフラグを操作します。
OS_SetIrqCheckFlag(), OS_ClearIrqCheckFlag(), OS_GetIrqCheckFlag()
割り込みが発生するまで、ウェイトするという目的で次の関数が用意されています。
OS_WaitIrq(), OS_WaitAnyIrq(), OS_WaitInterrupt()
このうち OS_WaitIrq() 、 OS_WaitInterrupt() は引数で指定した割り込みを待ちます。
これに対し、OS_WaitAnyIrq() はあらゆる割り込みを待ちます。
OS_WaitIrq() と OS_WaitInterrupt() の違いは、割り込みを待つ際の動作です。OS_WaitIrq() はコンテキストを切り替えて他のスレッドに処理を移しますが、OS_WaitInterrupt() は OS_Halt() を呼んでその場で停止しますのでスレッドの切り替わりは発生しません。スレッドシステムを使用していない場合は両者の違いはありません。
システムコールには Vブランクを待つための SVC_WaitVBlankIntr() という関数があります。この関数はスレッドを切り替えません。
これらの割り込み待ち関数の内部では、OS_Halt() で一時停止状態になっていたり他のスレッドに処理を明け渡していますが、割り込みが発生して実行状態になったときに、発生したのが指定の割り込みだったかどうか判定するために、割り込みチェックフラグを参照します。そのため割り込みハンドラでは、割り込みチェックフラグをセットする必要があります。
Vブランク割り込みを利用したVブランクカウンタの値を取得する以下の関数が用意されています。
内部では、ARM7 が常にVブランク割り込みをイネーブルにしておき、割り込みの回数をメインメモリの共有領域に書き込みます。ARM9 のその命令は、共有領域に書かれた値を返します。
PXI ライブラリは、ARM9 と ARM7 が通信するためのライブラリです。プロセッサ間の FIFO を使いデータを渡して他方のプロセッサに指示や情報を渡すことが可能です。
この機構のために PXI ライブラリでは OS_IE_SPFIFO_RECV 割り込みを使用しています。ARM9 の OS_IE_SPFIFO_RECV は ARM7→ARM9 方向の FIFO が空でない場合に ARM9に割り込みが掛かります(掛かり続けます)。ARM9 では OS_IE_SPFIFO_RECV 割り込みハンドラで FIFO からデータを取得します。(FIFO は ARM9→ARM7 方向のものも存在します。ここに ARM9 がデータを書き込むと、ARM7 側に割り込みが発生します。)
ARM9 が ARM7 に指示を出して行う多くの処理は、内部では PXI ライブラリで ARM7 に指示を出して、PXI ライブラリで ARM7 からの応答を待っています。従って OS_IE_SPFIFO_RECV 割り込みが有効でない場合、ARM7 からの応答を受け取ることができません。すなわち、リファレンス中で「PXI の割り込みが有効でないと処理が完了しません」 のような記述がある場合の割り込みは、OS_IE_SPFIFO_RECV を表します。
2010/02/10 PXI ライブラリの割り込みについて記述を追加
2007/10/09 TWLモードのレジスタを追加
2005/03/08 用語統一 [割込み] → [割り込み]
2004/12/14 用語や語尾など修正
2004/12/08 OS_IE_KEY についての注意を追加
2004/11/17 初版